介護施設の送迎車の法定点検・車検の義務|日常点検との違いと点検周期

トリニードカイゴ|介護施設の送迎ドライバー管理

 

「送迎車の点検は、車検さえ通しておけば大丈夫では」——施設の管理者の方からよくいただく質問です。結論からお伝えすると、道路運送車両法が自動車の使用者に義務づけているのは日常点検・定期点検(法定点検)・車検の3つで、車検だけでは義務を満たしたことになりません。さらに、車検証の「乗車定員」と「用途」の欄によって、点検の周期も車検の間隔も変わります。この記事では、根拠条文に沿って送迎車の点検義務を整理します。

送迎車に義務づけられている3つの点検・検査

道路運送車両法では、点検・検査が次の3階層に分かれています。それぞれ根拠条文も目的も異なります。

日常点検整備(法第47条の2)

第47条の2第1項は、使用者に対し「自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」「灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない」と定めています。ライト・ブレーキ・タイヤなど、走り出す前に人の目で確かめる点検です。

そして同条第3項は、点検の結果、保安基準に適合しなくなるおそれがある状態や適合しない状態であれば「必要な整備をしなければならない」としています。▶ 点検して終わりではなく、直すところまでが義務という点は、現場に必ず伝えておきたいところです。日常点検の具体的な項目と進め方はデイサービス送迎車の日常点検|チェック項目と正しいやり方で解説しています。

定期点検整備=いわゆる法定点検(法第48条)

第48条第1項は、使用者に対し、自動車の区分ごとに定められた期間ごとの点検を義務づけています。期間の区分は次の3つです。

  • 3か月ごと…自動車運送事業の用に供する自動車、車両総重量8トン以上の自家用自動車、その他国土交通省令で定める自家用自動車(第1号)
  • 6か月ごと…道路運送法第78条第2号の自家用有償旅客運送に使う自家用自動車、レンタカー、その他国土交通省令で定める自家用自動車(第2号)
  • 1年ごと…前2号に掲げる自動車以外の自動車(第3号)

点検の中身は国土交通省令である自動車点検基準が定めており、第1号の自動車には別表第三、第2号の自動車には別表第五、第3号の自動車には別表第六が適用されます(同基準第2条)。

車検(継続検査・法第61条)

車検は「保安基準に適合しているか」を国が確認する検査で、点検整備とは別の制度です。第61条第1項は、旅客を運送する自動車運送事業用の自動車、貨物の運送用の自動車、国土交通省令で定める自家用自動車であって検査対象軽自動車以外のものは1年、その他の自動車は2年と定め、第2項で新車時の特例(自家用乗用自動車と二輪の小型自動車は3年など)を置いています。

よくある誤解が「車検に通ったから定期点検は不要」というものです。車検はその時点で保安基準に適合しているかの検査、定期点検は使用者が自ら行う予防的な点検整備で、法律上まったく別の義務です。

車検証の「乗車定員」と「用途」で義務が変わる

ここが介護施設にとって最も実務的な分かれ目です。同じ「送迎車」でも、車検証の記載によって適用される号が変わり、点検の周期も車検の間隔も変わります。まずは手元の車検証で乗車定員用途の2欄を確認してください。

乗車定員11人以上の送迎車は3か月ごと+毎日の運行前点検

自動車点検基準第3条第1項は、法第48条第1項第1号の「国土交通省令で定める自家用自動車」として、車両総重量8トン以上の自家用自動車に加え、車両総重量8トン未満で乗車定員11人以上の自家用自動車を挙げています。マイクロバスや大型のワゴン車で送迎している施設はここに当たり、定期点検は3か月ごと(加えて12か月ごと)になります。この区分に適用される別表第三について、国土交通省の解説では3か月ごとが51項目、12か月ごとが101項目とされています。

見落とされやすいのが日常点検です。法第47条の2第2項は、第48条第1項第1号・第2号に掲げる自動車の使用者または運行する者は「一日一回、その運行の開始前において」点検をしなければならないと定めています。つまり▶ 定員11人以上の送迎車は、日常点検が「適切な時期」ではなく毎日の運行前で義務になります。車両区分と運転免許の関係は介護施設の送迎車に必要な運転免許|定員・車両総重量で変わる区分もあわせてご確認ください。

用途が「特種」の福祉車両は6か月ごと

ここが最も抜けやすいポイントです。福祉車両の中には、車いすのまま乗車できる構造のため、車検証の用途欄が「乗用」ではなく「特種」で登録されている車両があります。この場合、自動車点検基準第3条第3項第6号の「広告宣伝用自動車その他特種の用途に供する自家用普通自動車及び小型自動車」に当たり、法第48条第1項第2号の自動車として定期点検は6か月ごとになります。

そして第2号の自動車も、法第47条の2第2項により日常点検は1日1回・運行開始前が義務です。定員が10人以下だからといって「1年に1回の点検でよい」と判断してしまうと、義務を半分以上取りこぼすことになります。▶ 定員だけでなく用途欄を必ず見る——これが実務上の最重要チェックです。

用途が「乗用」で定員10人以下なら1年ごと

車検証の用途欄が「乗用」で乗車定員が10人以下の送迎車は、法第48条第1項第3号の「前2号に掲げる自動車以外の自動車」に当たり、定期点検は1年ごとです。国土交通省の解説では1年ごとが29項目、車検にあわせて行う2年ごとが60項目(1年ごとの29項目を含む)とされています。日常点検は「適切な時期に」で足りますが、送迎という業務の性質上、毎日の実施をルール化しておくと確実です。

区分ごとの早見表

項目 用途「乗用」
定員10人以下
用途「特種」
(普通・小型)
定員11人以上
日常点検 適切な時期に 1日1回・運行開始前 1日1回・運行開始前
定期点検 1年ごと 6か月ごと 3か月ごと・12か月ごと
車検の有効期間 初回3年・以降2年 初回2年・以降2年 初回1年・以降1年
記録簿の保存期間 2年間 1年間 1年間

※車検の有効期間は道路運送車両法第61条および同法施行規則第37条で定められており、車種・用途ごとの一覧は国土交通省「自動車検査登録総合ポータルサイト」で確認できます。なお、道路運送法第78条第2号の自家用有償旅客運送として登録している車両も定期点検は6か月ごとです(法第48条第1項第2号)。軽自動車や、上の3区分に当てはまるか判断がつかない車両については、車検証を手元に置いたうえで運輸支局や整備工場にご確認ください。

点検整備記録簿は「備え置き」と「保存」が義務

法第49条第1項は、使用者に対し「点検整備記録簿を当該自動車に備え置き」、点検または整備をしたときは遅滞なく、点検の年月日・点検の結果・整備の概要・整備を完了した年月日などを記載しなければならないと定めています。事務所のファイルにまとめて保管するのではなく、車両に備え置く点がポイントです。

記載事項の細目は自動車点検基準第4条第1項が定めており、自動車登録番号(または車両番号・車台番号)、点検時の総走行距離、点検または整備を実施した者の氏名・名称および住所が必要です。保存期間は同条第2項で、3か月・6か月区分の自動車は記載の日から1年間、1年区分の自動車は2年間と定められています。

実施しなかった場合に何が起きるか

点検整備を怠った車両が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態、または適合しない状態にあるとき、国は使用者に対して必要な整備を行うことを命じることができます(法第54条)。国土交通省の解説によれば、この整備命令に従わない場合は車両の使用停止命令や50万円以下の罰金の対象となります(法第108条・第109条)。

さらに実務上重い意味を持つのが、事故が起きたときの説明責任です。ブレーキやタイヤに起因する事故が発生した場合、定期点検の記録が残っていなければ、施設が車両の安全管理をどう行っていたかを示す材料がありません。運営指導や保険の事故調査でも、記録簿は実施の記録として確認を求められる書類です。

点検の期限管理を仕組みに変えるお手伝いをします

送迎車の点検が抜けてしまう原因は、担当者の意識よりも仕組みにあることが少なくありません。車両ごとに用途区分も定員も違い、車検満了日と定期点検の期限がずれ、ドライバーが交代し、記録簿が車内に置きっぱなしになる——この状態では、どこかで抜けが出ます。車両台帳で区分と期限を一元管理し、日常点検を運行前のルーティンに組み込み、記録簿の記載と保管の担当を決める。この3点を整えるだけでも、抜けを防ぎやすくなります。

トリニードカイゴは、運行管理者資格と送迎ドライバーとしての実務経験を持つコンサルタントが、横浜市を中心に神奈川県内の介護施設の送迎ドライバー管理をご支援しています。点検の期限管理や記録簿の様式づくり、ドライバーへの落とし込みまで、現場が回る形でご提案します。

自施設の送迎車がどの区分に当たるのか、点検と記録が法令の求める水準を満たしているか気になる方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。