
送迎車の保険は、車検のときに更新しているだけで、中身までは確認していない——そんな施設は少なくありません。しかし送迎車は、利用者を乗せて毎日走る車です。万が一のとき、自賠責保険だけでは足りない部分があり、そこを補うのが任意保険です。この記事では、介護施設の送迎車について、自賠責保険と任意保険の役割の違い、そして施設として確認しておきたい補償範囲を、運行管理者資格を持つトリニードカイゴが整理します。
自賠責保険でカバーされる範囲を正しく知る
まず前提として、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、すべての自動車に加入が義務づけられている保険です。国土交通省は、すべての自動車は自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険・共済に入っていなければ運転することはできない、と示しています(原動機付自転車なども対象に含まれます)。送迎車も当然その対象です。
自賠責は「対人賠償のみ」で、支払限度額がある
見落とされがちなのが、自賠責の補償範囲の狭さです。国土交通省は「物損事故は補償の対象にはなりません。自賠責保険・共済の対象は、人身事故による対人損害賠償のみとなります」と明記しています。つまり、送迎中にガードレールや他人の車、住宅の塀を壊してしまっても、自賠責からは支払われません。
さらに、対人であっても支払限度額が定められています。国土交通省が示す限度額は、被害者1人につき次のとおりです。
▶ 自賠責保険の支払限度額(被害者1人あたり)
・傷害による損害:120万円
・死亡による損害:3,000万円
・後遺障害による損害:程度に応じて75万円(第14級)から3,000万円(第1級)。常時介護を要する場合は最高4,000万円
送迎中の事故で利用者が重い後遺障害を負った場合、実際の損害賠償額がこの限度額を超えることは十分に考えられます。超えた部分は施設の負担になります。ここを埋めるのが任意保険です。
送迎車の任意保険で確認すべき補償範囲
任意保険は商品や特約の組み合わせで内容が変わります。契約書や保険証券を見るときは、次の点を順に確認していくと整理しやすくなります。
対人・対物賠償が無制限になっているか
対人賠償は自賠責の上乗せ部分、対物賠償は物を壊したときの補償です。介護送迎では、住宅街の狭い道での接触や、送迎先の門扉・カーポートの損傷といったケースも起こり得ます。金額を絞った契約になっていないか、まず確認しておきたいところです。
乗っている利用者への補償があるか
送迎車の特徴は、常に利用者が同乗していることです。事故で同乗中の利用者がけがをした場合に備え、人身傷害補償や搭乗者傷害の扱いがどうなっているかは必ず押さえておきましょう。とくに高齢の方は、軽い衝撃でも骨折などにつながることがあり、通院が長引く場合もあります。
運転者の範囲・年齢条件が実態と合っているか
実務でとくに注意したいのがここです。保険料を抑えるために「運転者を限定する」「年齢条件をつける」設定にしていると、条件から外れた人が運転して事故を起こした場合、補償が受けられないおそれがあります。
送迎現場では、急な欠勤で別の職員が代わりに運転する、繁忙期だけ応援を頼む、といったことが起こります。誰が運転する可能性があるのかを洗い出し、契約内容がその実態と合っているかを見直してください。あわせて、車の使用目的の申告内容が現状と合っているかも確認しておくと安心です。詳しい条件は保険会社によって異なりますので、必ず代理店や保険会社に個別に確認しましょう。
保険だけでは埋まらない部分がある
ここまで補償の話をしてきましたが、施設にとって重要なのは「保険で足りるかどうか」だけではありません。送迎中の事故では、施設が利用者に対して負う安全配慮義務が問われることがあります。金銭的な賠償が保険でまかなえたとしても、行政や家族への説明、再発防止の体制づくりまでは保険が代わってくれるわけではありません。
施設が問われる法的責任の考え方はデイサービス送迎中の事故、施設の法的責任はどこまで?で整理しています。実際に事故が起きてしまったときの初動については送迎中に事故が起きたら?管理者が取るべき対応手順もあわせてご覧ください。
保険の見直しは、事故が起きてからでは間に合いません。年に一度の更新のタイミングで、補償範囲と運転者の実態を突き合わせておくことをおすすめします。
送迎の体制づくりはトリニードカイゴへ
トリニードカイゴは、介護施設の送迎ドライバー管理を専門にお手伝いしています。運行管理者の資格と、実際に送迎ドライバーとして現場を走ってきた経験の両方から、記録の整え方、点呼や健康管理、事故が起きたときの手順づくりまで、現場で回る形に落とし込むご支援をしています。
横浜市を中心に神奈川県内の施設さまからご相談をいただいております。「保険は入っているが、体制まで手が回っていない」「何から見直せばよいか分からない」といった段階でも構いません。送迎の安全管理でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。


