送迎ドライバーの免許証確認と更新管理|道交法75条と失効を防ぐ仕組み

トリニードカイゴ|介護施設の送迎ドライバー管理

 

「入職のときに免許証を見たから大丈夫」——送迎ドライバーの免許の確認を、採用時の1回だけで終わらせていないでしょうか。運転免許は、更新を忘れれば失効し、違反が重なれば停止されることがあります。道路交通法第75条は、自動車の使用者(安全運転管理者などを含む)が、業務に関して免許を受けていない人や免許が停止されている人に運転させること、またそれを容認することを禁じています。つまり、施設に必要なのは「一度見た」という事実ではなく、免許が今も有効であることを継続して確かめる仕組みです。この記事では、条文を確認しながら、送迎ドライバーの免許の確認と更新管理の具体的な方法を整理します。2025年3月から運用が始まったマイナ免許証の確認方法にも触れます。

送迎ドライバーの免許確認は道路交通法の「使用者の義務」から考える

法律に「従業員の免許証を毎月確認しなければならない」という条文があるわけではありません。ただし、確認をしないまま運転させることには、はっきりしたリスクがあります。その根拠となる2つの規定を見ておきます。

道路交通法第75条第1項第1号|無免許運転を命じ・容認してはならない

道路交通法第75条第1項は、自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む)について、「その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。」と定めています。その第1号が、免許を受けている者でなければ運転できない自動車を、免許を受けている者以外の者(免許の効力が停止されている者を含む)が運転することです。更新を受けずに失効した免許は、免許を受けていない状態と同じ扱いになります。

この第1号に違反したときの罰則は、同法第117条の2の2第2項第1号で「三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」とされています。さらに第123条のいわゆる両罰規定の対象にもなっており、従業者が法人の業務に関して違反をしたときは、行為者のほか法人にも罰金刑が科される仕組みです。また第75条第2項では、違反の内容によって、公安委員会がその自動車を6か月を超えない範囲で運転させないよう命じることができるとされています。

罰則が実際に適用されるかどうかは、個別の事情によって判断されます。ただ、運転者の免許が切れていたことが後から分かった場合、「施設として確認の仕組みがあったか」「確認の記録が残っているか」は、事故の有無にかかわらず、送迎の安全管理体制を説明するうえで欠かせない材料になります。

安全運転管理者の業務|施行規則第9条の10第1号

乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所(使用の本拠)では、原則として安全運転管理者の選任が必要です(道路交通法第74条の3、施行規則第9条の8。道路運送法の自動車運送事業者や同法第79条の登録を受けた者などは、条文上この選任の対象から除かれています)。その業務として、道路交通法施行規則第9条の10第1号は「自動車の運転に関する運転者の適性、技能及び知識並びに法及び法に基づく命令の規定並びに法の規定に基づく処分の運転者による遵守の状況を把握するための措置を講ずること。」を挙げています。免許の有効期間や、免許停止などの処分を受けていないかを把握することは、この業務の土台にあたります。選任の要件や他の業務については、安全運転管理者の選任義務とは?介護施設が知るべき基礎知識を解説で詳しく解説しています。

一方、第75条第1項の使用者の義務には、こうした台数や事業者の種類による区別はありません。安全運転管理者の選任義務がない小規模な事業所や、選任の対象から除かれる事業者でも、運転者の免許を確かめる仕組みは同じように整えておくことが大切です。介護タクシーや福祉有償運送もあわせて行っている事業所などで、選任が必要かどうか判断に迷うときは、使用の本拠を管轄する警察署に確認してください。

送迎ドライバーの免許が「使えなくなる」3つのパターン

採用時に有効だった免許が、送迎の途中で使えなくなる典型的なパターンは次の3つです。

▶ ① 更新を忘れて失効する

免許証の有効期間の末日は、原則として誕生日から起算して1か月を経過する日です(道路交通法第95条の6)。更新の手続きができる「更新期間」は、有効期間が満了する日の直前の誕生日の1か月前から、有効期間が満了する日までです(同法第101条第1項)。この期間に更新を受けなかったときは、免許は効力を失います(同法第105条)。有効期間の長さは、優良運転者かどうかや年齢などによって異なるため、ドライバーごとに末日を確認しておくことが大切です。

▶ ② 免許停止などの処分を受ける

交通違反の累積などによって免許の停止処分を受けると、その期間は運転できません。処分は業務中の違反だけでなく、休日に私用で運転したときの違反でも受けることがあります。免許の効力が停止された人は、免許証を公安委員会に提出しなければならず(道路交通法第106条の3第4項)、マイナ免許証の場合は免許情報記録の抹消を受けることになっています(同法第106条の4第1項第2号)。ただ、処分を受けたことは、本人が申告しなければ施設には伝わりにくいため、定期的な原本の確認と申告のルールを組み合わせておくことが大切です。

▶ ③ 免許の種類・条件が車両に合っていない

免許が有効でも、運転する送迎車の区分に対応していなければ運転できません。また、AT車限定や眼鏡等の使用といった条件が付いている場合は、その条件を守る必要があります。車両の入れ替えやドライバーの配置換えのときは、あらためて確認してください。車両の定員・車両総重量と免許区分の関係は、介護施設の送迎車に必要な運転免許|定員・車両総重量で変わる区分で整理しています。

マイナ免許証の送迎ドライバーは確認の方法が変わる

2025年3月24日から、マイナンバーカードと運転免許証の一体化の運用が全国で始まりました。運転免許証だけを持つ、マイナンバーカードと一体化した「マイナ免許証」だけを持つ、両方を持つ、という3つの持ち方ができます。

ここで施設が気をつけたいのは、マイナ免許証は、マイナンバーカードの券面に免許の情報が記載されないという点です。免許の情報はカードのICチップに記録されます。そのため、従来のように「カードの表面を見て有効期間を確かめる」ことができません。

マイナ免許証読み取りアプリで確認できること

警察庁は、ICチップの免許情報を確認できる「マイナ免許証読み取りアプリ」を無料で提供しています(警察庁ウェブサイト「マイナ免許証読み取りアプリ 専用サイト」)。警察庁のFAQによると、確認できるのは、マイナ免許証の番号、免許の年月日と有効期間の末日、免許の種類、免許の条件、免許用の顔写真(モノクロ)、色区分などです。

ただし、読み取りには免許保有者本人が設定した暗証番号(数字4桁)が必要です。施設で確認するときは、本人に立ち会ってもらい、暗証番号は本人に入力してもらう形にしましょう。施設が暗証番号を聞き取ったり、一覧にして保管したりすることは避けてください。

また、このアプリには、有効期間の末日の2か月前・4か月前・6か月前から選んで、更新期間の末日が近づいていることを知らせる通知機能があります。マイナ免許証を持つドライバーには、この通知をオンにしておくよう声をかけておくと、更新忘れの予防になります。

送迎ドライバーの免許の失効を防ぐ確認と更新管理の仕組み

確認を「担当者の気づき」に頼ると、人が入れ替わったときに途切れます。次の5つを、ルールとして決めて書面に残しておくことをおすすめします。

入職時と定期の確認を決めておく

▶ 入職時に台帳へ記録する
送迎を担当する前に、原本(マイナ免許証の場合はアプリの表示)で、免許の種類・条件・有効期間の末日を確認し、ドライバーごとの台帳に記録します。

▶ 定期的に原本を確認する
道路交通法第95条第1項は、運転するときに免許証を携帯することを義務づけています。月に1回など頻度を決めて、乗務前の点呼の際などに原本(マイナ免許証の場合は読み取りアプリの表示)を確認し、確認した日と確認者を記録しておくと、確認の実績が残ります。

▶ 有効期間の末日を「期限管理」する
台帳の末日をもとに、たとえば3か月前に本人へ声をかけ、更新後は新しい末日を記録します。更新期間が満了する日に70歳以上となるドライバーは、原則として更新の前に高齢者講習(75歳以上では認知機能検査なども)を受けておく必要があるため(道路交通法第101条の4第1項・第2項)、声かけはさらに早めにしておくと安心です。車検や保険と同じように、期限の一覧をまとめておくと見落としが減ります。

処分の申告と運転記録証明書の活用

▶ 違反・処分の申告ルールを決める
免許の停止などの処分を受けたときは、速やかに管理者へ申告することを、就業規則や送迎の手順書に明記しておきます。申告したことで不利益な扱いをしないことも、あわせて伝えておくと申告しやすくなります。

▶ 運転記録証明書で客観的に確かめる
自動車安全運転センターの「運転記録証明書」は、過去5年・3年・1年の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分の記録を証明するものです。従業員が企業の代表者に申請を委任することで(委任状による場合は、従業員それぞれの署名または記名・押印が必要です)、企業が一括して申請する方法も用意されています(自動車安全運転センターホームページ「企業等による一括申請について」)。本人の同意を得たうえで、定期的な確認に取り入れる方法もあります。

免許証の写しや運転記録証明書は、ドライバー本人の個人情報です。利用目的を本人に伝え、必要な範囲だけを保管し、保管場所と閲覧できる人を決めておきましょう。なお、マイナ免許証はマイナンバーカードそのものです。裏面(個人番号)のコピーは取らず、保管もしないでください。

失効や処分が分かったときの対応

免許の失効や停止が分かったら、その時点で送迎の乗務から外し、代わりのドライバーで便を組み直します。「今日だけ」「近所だけ」という例外は作らないことが大切です。

更新を受けずに失効した場合でも、失効した日から6か月を経過しないうちであれば、適性試験に加えて所定の講習などを受けることで、学科試験と技能試験が免除される扱いがあります(道路交通法第97条の2第1項第3号)。ただし、失効した後に違反をした場合などは対象にならないことがあり、年齢などによって必要な検査や講習が異なるため、手続きの詳細は、住所地を管轄する運転免許センターなどで本人に確認してもらいましょう。

出典:道路交通法(昭和35年法律第105号)第74条の3、第75条第1項・第2項、第95条第1項、第95条の6、第97条の2第1項第3号、第101条第1項、第101条の4第1項・第2項、第105条、第106条の3第4項、第106条の4第1項第2号、第117条の2の2第2項第1号、第123条、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第34条の3第2項、道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)第9条の8第1項、第9条の10第1号=e-Gov法令APIで現行の条文を確認(2026年9月時点)/警察庁「マイナンバーカードと運転免許証の一体化・オンライン更新時講習」および「マイナ免許証FAQ」/自動車安全運転センター「運転経歴に係る証明書」「企業等による一括申請について」。本記事では、トリニードカイゴがこれらの内容を要約・編集して紹介しています。制度や運用は改正されることがありますので、実際の対応の前に必ず最新の記載をご確認ください。

トリニードカイゴが、送迎ドライバーの免許管理の仕組みづくりをご支援します

免許の確認は、一つひとつの作業は簡単でも、ドライバーが増えたり担当者が替わったりすると、いつの間にか途切れてしまいがちです。誰が、いつ、何を見て、どこに記録するか——それを決めて回し続けられるかどうかが、無免許運転を防ぐ分かれ目になります。

トリニードカイゴは、運行管理者資格と送迎ドライバーとしての実務経験を持つコンサルタントが、横浜市を中心に神奈川県内の介護施設の送迎ドライバー管理をご支援しています。免許の確認台帳や点呼の手順づくりについても、施設の状況に合わせてご相談いただけます。

送迎ドライバーの免許管理に不安のある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。