デイサービス送迎車の停車・乗降時の事故を防ぐ|道交法と安全確認の手順

トリニードカイゴ|介護施設の送迎ドライバー管理

 

「利用者の乗り降りのためなら、少しくらいどこに停めても大丈夫」——そう考えている現場は少なくありません。たしかに道路交通法では、人の乗り降りのための停止は「駐車」には当たりません。しかし、交差点や横断歩道の近く、坂の頂上付近などでは、乗り降りのためであっても停車そのものが禁止されています。また、ドライバーが利用者を玄関まで送るために車を離れると、その時点で「駐車」の扱いになりえます。この記事では、送迎の乗降時の事故を防ぐために、「どこに停めるか」「ドアを開ける前に何を見るか」「車を離れるときに何をするか」の3つを、道路交通法の条文に沿って整理します。

乗降のための「停車」と「駐車」の違いを押さえる

まず、言葉の定義を確認しておきます。道路交通法第2条第1項第18号は、「駐車」を次のように定めています。

車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。

そして同項第19号は、「停車」を「車両等が停止することで駐車以外のもの」としています。

ここで送迎の現場にかかわるのは、定義の後半です。人の乗り降りのための停止は、それだけなら「駐車」から除かれます。ただし、運転者が車を離れて直ちに運転できない状態になれば、理由にかかわらず「駐車」に当たります。ドライバー1人の便で、利用者に付き添って玄関先や家の中まで入る場面は、まさにこの状態になりやすいと言えます。また、運転者が車に残っていても、利用者の支度を待つなどで停止が長くなる場合の扱いは、管轄の警察署にご確認ください。

駐車禁止の場所で車を離れる送迎に注意

道路交通法第45条第1項は、道路標識等で駐車が禁止されている場所のほか、次のような場所での駐車を禁止しています。

▶ 道路外の施設・駐車場などの、道路に接する自動車用の出入口から3メートル以内

▶ 道路工事の区域の側端から5メートル以内

▶ 消防用機械器具の置場・消防用防火水槽の側端やその出入口から5メートル以内

▶ 消火栓・指定消防水利の標識の位置、防火水槽の吸水口などから5メートル以内

▶ 火災報知機から1メートル以内

さらに同条第2項は、駐車する場合に車の右側の道路上に3.5メートル(道路標識等で距離が指定されているときはその距離)以上の余地がなくなる場所での駐車を禁止しています(公安委員会が交通がひんぱんでないと認めて指定した区域を除く、などの例外があります)。利用者の自宅前の道が狭い住宅街では、ドライバーが車を離れた時点でこの規定にかかることがある、と覚えておいてください。

こうした場所で車を離れる必要があるなら、ドライバーが車を離れずに済むよう添乗介助者を付ける、停める場所を変えるといった対応を、送迎計画の段階で考えておくことが基本です。どうしても難しい場合の扱いは、管轄の警察署に相談してください(第45条第1項ただし書は、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときを例外としています。この例外は同項についてのもので、同条第2項の場所(右側に3.5メートルの余地がなくなる場所)や、次の章で紹介する第44条の場所には同じ定めはありません)。

乗り降りのためでも停められない場所(道路交通法第44条)

第44条第1項は、道路標識等で停車と駐車が禁止されている場所のほか、次の場所について、法令の規定や警察官の命令による場合、危険を防止するため一時停止する場合を除いて、停車も駐車もしてはならないと定めています。人の乗り降りのための停止も「停車」なので、これらの場所では送迎の乗降もできません。

▶ 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂、トンネル

▶ 交差点の側端または道路の曲がり角から5メートル以内

▶ 横断歩道・自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内

▶ 安全地帯の左側の部分と、その前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内

▶ バス停・路面電車の停留場の標示柱・標示板から10メートル以内(運行時間中に限る)

▶ 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内

送迎で見落としやすいのは、利用者の自宅が角地にある場合の「曲がり角から5メートル以内」と、坂の多い住宅地での「坂の頂上付近」「勾配の急な坂」です。横浜市内のように坂道が多い地域では、玄関の目の前がちょうど坂の途中、ということも珍しくありません。急な坂での乗り降りは、法令の面だけでなく、車いすが動き出す・足元がふらつくといった危険も大きくなります。

停める場所は「利用者ごと」に決めて送迎表に書く

停車位置をドライバーの当日の判断に任せると、担当が替わったときに危ない場所で停めてしまうことがあります。利用開始の前に、次の点を利用者ごとに確認して、送迎表や利用者情報に残しておくと安心です。

▶ 停める位置
自宅前のどこに停めるか。第44条・第45条の場所に当たらないか、実際に現地で確認します。

▶ 停められないときの代わりの場所
工事や駐車車両で塞がれていた場合に使う場所を、あらかじめ決めておきます。代わりの場所から玄関までの歩く距離と段差も確認します。

▶ 敷地内に入れてもらえるか
自宅の駐車スペースや集合住宅の敷地を使わせてもらう場合は、本人・家族や管理者の了解を取ったうえで記録に残します。

▶ 乗り降りに必要な人数
車を離れる必要がある利用者かどうかを見て、ドライバー1人で回せるかを判断します。

停める場所はルートの組み方とも直結します。ルート作りの手順はデイサービス送迎ルートの組み方|効率化と安全を両立する5ステップで整理しています。

停め方の基本は「左側端に寄せる」

第47条第1項は、人の乗り降りのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならないとしています。

車道の左側端に接して路側帯が設けられている場所では、同条第3項と道路交通法施行令第14条の6により、原則として路側帯に入って停めます。歩行者が通る路側帯に入るときは、車の左側に歩行者が通るための0.75メートルの余地をとる決まりです(停車・駐車を禁止する表示のある路側帯や、幅0.75メートル以下の歩行者用の路側帯には入りません)。

一方、歩道と車道の区別がある道路では、車両は車道を通行しなければならないとされています(第17条第1項)。道路外の施設や場所に出入りするためにやむを得ず歩道を横断する場合などは例外ですが、その場合も歩道に入る直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはなりません(同条第2項)。乗り降りを楽にするために歩道に乗り上げて停める、という停め方はしないことを、ドライバー全員で共有しておきましょう。

ドアを開ける前の安全確認(第71条第4号の3)

乗降時の事故で気をつけたいのが、ドアを開けたときの後方からの自転車やバイクとの接触です。第71条第4号の3は、運転者が守るべき事項として、「安全を確認しないで、ドアを開き、又は車両等から降りないようにし、及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為により交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること」を定めています。

ポイントは後半です。運転者自身だけでなく、同乗している人がドアを開けて危険を生じさせないようにすることも、運転者の役目とされています。利用者が自分でドアを開けてしまうことがないよう、乗降の声かけとドア操作は職員が行う、と決めておくことが大切です。

あわせて、次の点も現場のルールにしておくと事故を防ぎやすくなります。

▶ 乗り降りは歩道側(左側)から
車道側のドアから乗り降りすると、後ろから来る車や自転車との距離が近くなります。

▶ ドアを開ける前に後方を目で確認する
ミラーだけでなく、振り返って自転車やバイク、歩行者がいないかを確かめます。

▶ スライドドアの開閉時は手足の位置を見る
閉めるときに、利用者の手や衣服、つえ、職員の手がはさまれていないかを確認してから閉めます。

▶ 後ろから乗り降りする車いすは後続車に注意
後部のスロープやリフトを使うときは、介助する職員が車の後ろの道路側に出ることになります。後続車の動きを確認しながら操作します。

▶ 高齢の歩行者・車いすの通行に配慮する
第71条第2号・第2号の2は、車いすで通行している人や、高齢の歩行者など通行に支障のある歩行者が通行しているときは、一時停止または徐行してその通行を妨げないことを求めています。送迎先の周辺は、まさにそうした方が多く歩く場所です。

車を離れるときは「エンジンを止める」が原則(第71条第5号)

第71条第5号は、車両等を離れるときは、原動機を止め、完全にブレーキをかけるなど、停止の状態を保つため必要な措置を講ずることを定めています。坂道で停めたときは、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)を確実にかけ、オートマチック車ではシフトをパーキングに入れたことを確認してから降ります。

ここで気をつけたいのが、利用者を車内に残したままドライバーが車を離れる場面です。エンジンを止めた車内は、夏や冬には短時間でも温度が大きく変わり、特に夏場は熱中症の危険があります。また、車内に利用者だけが残る時間は、急な体調の変化やドアの開閉による事故に気づけない時間でもあります。利用者を車内に残したまま車を離れないことを原則にしてください。

そのためには、車内に利用者を残して離れる場面がそもそも生まれないように、便の組み方と人員配置で解決するのが基本です。ドライバー1人で回す便の条件や、添乗介助者との役割分担はデイサービス送迎の人員配置|ドライバーと添乗介助者の役割分担で詳しく整理しています。

乗降の手順を「声に出す」形にそろえる

停車から発進までの流れを手順として決め、職員の間でそろえておくと、確認の抜けが減ります。たとえば次のような流れです。

▶ 1. 決めた位置に、左側端に寄せて停める

▶ 2. パーキングブレーキ・シフト位置を確認し、ハザードランプで周囲に停車を知らせる

▶ 3. 運転者が降りるときは、運転席側(車道側)の後方を目で確認してからドアを開ける。車を離れる場合は上で述べたとおりエンジンを止める

▶ 4. 後方を目で確認してから、職員が利用者側のドアを開ける

▶ 5. 足元・段差を確認しながら乗降を介助する

▶ 6. 着座とシートベルト(車いすは固定)を確認し、手足の位置を見てからドアを閉める

▶ 7. 車の周りと後方に人や自転車がいないことを確かめてから発進する

「後方よし」「ドア閉めます」のように声に出して確認すると、ドライバーと添乗介助者の両方が同じことを確かめられます。乗降時にひやりとした場面は、小さなことでも記録して共有し、停める場所や手順の見直しにつなげてください。

あわせて、乗降時に事故が起きてしまったときに備え、負傷者の救護、119番や警察への通報、施設・ご家族への連絡の流れも決めておきましょう。管理者が取るべき対応は送迎中に事故が起きたら?管理者が取るべき対応手順で時系列に整理しています。

判断に迷ったときの確認先

この記事は道路交通法の条文に沿った一般的な整理です。個別の場所で停車・駐車ができるかどうか、道路標識や道路標示の意味、駐車の許可については、その場所を管轄する警察署へご確認ください。道路標識等による規制は場所ごとに異なり、この記事で紹介した場所以外にも停車や駐車が禁止されている場所があります。

出典:道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第18号・第19号、第17条第1項・第2項、第44条第1項、第45条第1項・第2項・第3項、第47条第1項・第3項、第71条第2号・第2号の2・第4号の3・第5号、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第14条の6=いずれもe-Gov法令APIで条文を確認(2026年10月時点)。本記事では、トリニードカイゴがこれらの内容を要約・編集して紹介しています。法令は改正されることがありますので、実際の対応の前に必ず最新の条文をご確認ください。

トリニードカイゴが、乗降時の安全ルールづくりをご支援します

乗降時の事故は、車が停まっている間に起きる事故です。どこに停めるか、誰がドアを開けるか、車を離れてよいのはどんなときか——決めて、送迎表と手順に書いて、全員でそろえておくことが、事故を防ぐいちばんの近道です。

トリニードカイゴは、運行管理者資格と送迎ドライバーとしての実務経験を持つコンサルタントが、横浜市を中心に神奈川県内の介護施設の送迎ドライバー管理をご支援しています。利用者ごとの停車位置の見直しや、乗降手順の整備についても、施設の状況に合わせてご相談いただけます。

送迎の乗降時の安全に不安のある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。