介護施設の送迎に使う福祉車両の選び方|8ナンバーと消費税・自動車税の扱い

トリニードカイゴ|介護施設の送迎ドライバー管理

 

送迎車の入れ替えで福祉車両を検討するとき、迷いやすいのが「どのタイプを選ぶか」と「どう買うか」です。結論から申し上げると、車種選びは利用者が車いすのまま乗るかどうかで決まり、買い方を間違えると消費税の非課税と自動車税の減免を取り逃します。一般の車を先に買ってから改造すると、車両本体の代金には消費税がかかります。自動車税の減免も、たとえば神奈川県では新たに取得した車は登録の日から1か月が申請期限です(要件も期限も都道府県ごとに違います)。この記事では、選定から登録後の管理までを順に整理します。

福祉車両は「車いすのまま乗るかどうか」で分かれる

福祉車両と一口にいっても、大きく2つの方向があります。

▶ 乗り込みを助けるタイプ
助手席や後席が回転する、あるいは座面が外に出て下がるタイプです。座席へ移乗できる方が対象で、車いすは折りたたんで荷室に積みます。車両そのものは通常の乗用車に近く、送迎以外の用途にも使いやすいのが利点です。

▶ 車いすのまま乗るタイプ
スロープまたはリフトで車いすごと乗せる構造です。移乗が難しい方、移乗のたびに負担が大きい方が対象になります。車いすを固定する装置が備わり、乗降にかかる時間と手順は前者より増えます。

施設で選ぶときに難しいのは、利用者の状態は変わっていくという点です。今は座席に移乗できる方でも、数年後に車いすのままの乗車が必要になることは珍しくありません。現在の利用者だけで決めず、送迎ルート全体の中でどの車がどの利用者を担当するのかを見たうえで判断してください。なお、定員と車両総重量によっては必要な運転免許の区分も変わりますので、候補が決まったら免許の要件もあわせて確認してください。

消費税が非課税になる自動車と、非課税にならない買い方

福祉車両には、消費税が非課税になるものがあります。根拠は消費税法別表第二第十号で、「身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品として政令で定めるもの」の譲渡等が非課税とされています。その範囲を定める消費税法施行令第十四条の四第1項は、「義肢、視覚障害者安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車椅子その他の物品で、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品として内閣総理大臣及び厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するものとする。」と定めています。

自動車について、国税庁は非課税となる乗用自動車を次の2つに整理しています(タックスアンサーNo.6214・令和7年4月1日現在法令等)。

  • 身体障害者による運転に支障がないよう、道路交通法第91条の免許の条件の趣旨に従い、その身体障害者の身体の状態に応じて、手動装置、左足用アクセル、足踏式方向指示器、右駐車ブレーキレバー、足動装置、運転用改造座席といった補助手段が講じられている自動車
  • 車椅子および電動車椅子を使用する者を車椅子等とともに搬送できるよう、車椅子等昇降装置を装備し、かつ車椅子等の固定等に必要な手段を施した自動車(乗車定員11人以上の普通自動車については、車椅子等を使用する者を専ら搬送するものに限る)

施設の送迎車で関係するのは、多くの場合2つ目です。ここで実務上いちばん取り逃しやすいのが買い方です。国税庁は同じページで、次の点を明記しています。

▶ 改造を委託する場合は「製作の請負」として非課税
他の者から委託を受けて一般自動車を非課税対象となる自動車に改造する行為は、製作の請負に該当し、非課税になります。

▶ 先に一般車を買ってから改造すると、車両本体は課税
改造代金だけでなく改造をした自動車の譲渡代金も非課税になりますが、いったん一般自動車を購入し、その後に改造を行う場合には、当初の一般自動車の購入は課税となり、改造代金についてのみ非課税とされます。順番が違うだけで負担が変わります。

▶ 部品や装置だけを買っても非課税にはならない
補助手段の部品や装置自体の譲渡は非課税とはなりません。

見積りを取る段階で「福祉車両として完成した状態で購入するのか、手持ちの車を改造するのか」を決めておくことが、そのまま金額の差になります。

なお、国税庁のこの説明は自動車の構造で非課税の範囲を定めており、誰が買うか(購入者や使用者)については触れていません。施設として購入する場合の当てはめは、所轄の税務署または顧問税理士にご確認ください。取得時には自動車重量税など他の税もかかりますので、見積りの総額で比べることも忘れずに。

神奈川県では自動車税が全額減免になる場合がある

自動車税の減免は都道府県の制度です。神奈川県には、施設が持つ送迎車に関係する減免が2つあります。車両の構造で判断するものと、運営法人と用途で判断するものです。

①車両の構造で判断する「福祉的構造を有する自動車の減免」

神奈川県では、次のいずれかに該当する自動車が対象とされています。

  • 自動車検査証の「車体の形状」欄に「車いす移動車」または「入浴車」と記載されている自動車(8ナンバーのもの)
  • 自動車検査証の「車体の形状」欄に「患者輸送車」と記載されている自動車(8ナンバーのもの)で、障害者の方の利用(輸送)にもっぱら使用するもの

減免額は自動車税額の全額です。営業用と記載されているものも含まれ、リース車やレンタカーも対象になるとされています。なお県の案内には「障害者の方が使用する自動車の減免に該当する自動車を除きます」という但し書きがありますが、これは障害のあるご本人やご家族が持つ車を対象にした別制度を指すもので、施設が持つ車が対象外になるという意味ではありません。

▶ 期限に注意
申請の期限は、新たに取得した自動車は登録の日から1か月を経過する日、すでに所有している自動車は減免を受けようとする年度分の自動車税の納期限(通常は5月31日)です。納車のあとに気づいても間に合わないことがありますので、購入を決めた時点で書類の準備を始めてください。

▶ 「患者輸送車」は使い方の証明が要る
患者輸送車は車両構造だけでは「障害者の方の利用にもっぱら使用する」ことを判断できないため、神奈川県は原則として、1年間の全運行日数のうち80%以上を障害者の方の利用に使用していることが確認できる運行実績報告書(実績がない場合は運行計画書)の提出を求めています。あわせて、事業のために使う場合は利用者名簿・事業内容が分かるパンフレット・定款や規約の写しなど、身体障害者等の利用に供することが確認できる書類も必要とされています。日々の運行記録が、そのまま減免の裏付けになるということです。

②運営法人と用途で判断する「在宅福祉サービス事業用自動車の減免」

神奈川県には、車両の構造ではなく運営している法人と使い道で判断する減免もあります。こちらは8ナンバーである必要がありません。

減免を受けられるのは、社会福祉法人、公益社団法人、公益財団法人または特定非営利活動法人(NPO法人)で、いずれも社会福祉事業を行うことを目的とする法人に限られます。対象になる自動車は、介護保険法の指定を受けた法人が通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、短期入所生活介護などを行う施設への要介護者・要支援者の通所・入所のためにもっぱら使用する自動車です(リース車は除かれます)。児童発達支援・放課後等デイサービス、生活介護・就労継続支援などの送迎車も、それぞれの法人区分で対象とされています。減免額はこちらも自動車税額の全額です。

▶ 2つの減免は、当てはまる条件が逆になっている
①は車検証の「車体の形状」で決まり、リース車やレンタカーも対象。②は法人格と用途で決まり、リース車は対象外。株式会社や合同会社が運営する施設は②の対象になりませんので、その場合は①のルートに当てはまるかどうかを見ることになります。自施設がどちらに当てはまるかは、県税事務所にご確認ください。

②の申請では、自動車検査証や定款・登記事項証明書に加えて、運行記録簿(新規登録の場合は運行計画書または運行予定経路図)の提出が求められます。ここでも、普段の運行記録がそのまま書類になります。

要件も様式も都道府県ごとに違いますので、神奈川県以外の施設は、所在地を管轄する県税事務所の案内をご確認ください。

8ナンバーになると、登録後の管理も変わる

はじめにお伝えしておくと、スロープ車・リフト車が必ず8ナンバーになるわけではありません。同じように車いすのまま乗れる車でも、車検証の用途欄が「乗用」のまま登録されている車両もあります。減免の可否も点検・車検の周期も、この車検証の記載で分かれますので、見積りの段階で「登録上どの用途・車体の形状になるのか」を販売店に確認してください。

「車いす移動車」のように用途が「特種」になる車両は、乗用の車と点検・車検の周期が変わります。福祉車両を入れるということは、点検の予定表と車検の周期を作り直すということでもあります。詳しくは介護施設の送迎車の法定点検・車検の義務|日常点検との違いと点検周期にまとめています。

あわせて、車いすのまま乗車する車両では、固定装置(タイダウン)の扱いがそのまま利用者の安全に直結します。装置の付いた車を入れただけでは安全になりません。誰がどの手順で固定するのかは車いす利用者の送迎|固定装置(タイダウン)の正しい使い方と点検にまとめていますので、納車前にドライバーと介助者で揃えておいてください。

導入前に決めておきたい3つのこと

▶ 停める場所と、乗り降りする場所
スロープやリフトは、車両の後方または側方に展開するためのスペースが要ります。施設の駐車場だけでなく、利用者宅の前で展開できるかどうかも確認が必要です。道が狭い住宅地では、車種の大きさが送迎ルートそのものを縛ります。

▶ 保険の見直し
車両を入れ替えれば、保険の契約内容も見直すことになります。車いすのまま乗車する構造の車両では、乗車定員の考え方や積載する装置の扱いが従来の車と変わることがありますので、契約前に補償範囲を保険会社に確認してください。

▶ ドライバーの慣熟
リフトやスロープの操作は、初めて触る人がその日の送迎でいきなり使えるものではありません。納車後に空き時間で練習する日を作り、操作と固定の手順を一度は全員で通してください。

判断に迷ったときの確認先

この記事は法令と公表資料の一般的な整理です。消費税の非課税の当てはめについては所轄の税務署または税理士へ、自動車税の減免の要件と様式については自動車税の申告先である県税事務所(神奈川県内は自動車税管理事務所)へ、車両の構造や用途区分については販売店・架装事業者へ、それぞれご確認ください。個々の車両がどの区分になるかは、実際の構造と自動車検査証の記載で決まります。

出典:国税庁ホームページ「タックスアンサー No.6214 身体障害者用物品に該当する自動車」(令和7年4月1日現在法令等)/消費税法別表第二第十号・消費税法施行令第十四条の四/神奈川県ホームページ「福祉的構造を有する自動車の減免」「在宅福祉サービス事業用自動車の減免」(いずれも2026年4月1日更新・2026年8月時点)。本記事では、これらの内容を要約・編集して紹介しています。制度の内容や様式は改正されることがありますので、実際のお手続きの前に必ず最新の記載をご確認ください。

トリニードカイゴが、車両の入れ替えを送迎体制ごと整えます

福祉車両の導入は、車を選んで終わりではありません。誰が運転するのか、点検を誰がいつ行うのか、車いすの固定をどう教えるのか、ルートは組み替えるのか。車両が変わると、送迎の段取りが変わります。

トリニードカイゴは、運行管理者資格と送迎ドライバーとしての実務経験を持つコンサルタントが、横浜市を中心に神奈川県内の介護施設の送迎ドライバー管理をご支援しています。車両更新にあわせた運行計画の組み直し、点検体制の設計、ドライバーへの手順の落とし込みまで、現場が回る形でご提案します。

送迎車の入れ替えを検討されている方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。