令和6年度(2024年度)の介護報酬改定で、通所介護(デイサービス)の送迎に関する取扱いが一部見直されました。「うちの施設のやり方は今のルールに合っているだろうか?」──そんな疑問をお持ちの管理者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護報酬改定の歴史を踏まえつつ、令和6年度改定における送迎関連の変更点と、現場での実務対応のポイントを解説します。
通所介護の「送迎」はどう扱われてきたか
加算から基本報酬へ、そして送迎減算の導入
通所系サービスの送迎は、介護保険制度創設時には加算で評価されていました。その後、平成18年(2006年)の介護報酬改定で送迎加算が基本報酬に組み込まれ、送迎費用は基本報酬に含まれる扱いとなりました。
さらに平成27年(2015年)の改定以降、送迎を実施しない場合に送迎減算(片道▲47単位/日、往復▲94単位/日)が適用される仕組みとなり、現在もこのルールが続いています。対象となるのは通所介護・通所リハビリテーション・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護です。つまり送迎は「任意のオプション」ではなく、通所サービスと一体のものとして制度設計されているのです。
令和6年度改定における送迎の主な変更点
① 送迎先の取扱いの明確化
令和6年度改定では、送迎先として「利用者の居住実態のある場所」を含めることが明確化されました。従来は「居宅と事業所の間」が原則でしたが、住民票上の住所と実際の生活拠点が異なるケース(家族宅で過ごしているなど)にも柔軟に対応できるよう整理されています。
ただし、居住実態のある場所を送迎先とするためには、以下の条件を満たす必要があります。
▶ 条件
・事業所のサービス提供範囲内であり、運営上支障がないこと
・利用者と利用者家族それぞれの同意が得られていること
条件を満たせば、居宅以外の場所と事業所間の送迎でも送迎減算の対象外となります。
② 他事業所利用者との同乗が明確化
同じく令和6年度改定で、他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗を可能とすることが明確化されました。これまでも令和3年度のQ&Aで共同送迎は送迎減算の対象にならないことが示されていましたが、制度上の位置づけがあいまいで取り組みにくいとの指摘がありました。
共同送迎を行う場合は、以下の条件が必要です。
▶ 条件
・事業所間で同乗にかかる条件(費用負担、責任の所在等)を合議のうえ決定していること
・送迎範囲は利用者の利便性を損なうことのない範囲であり、かつ各事業所の通常の事業実施地域範囲内であること
今回の明確化により、送迎ドライバー不足への対応策として、複数事業所による共同送迎が運用しやすくなります。ただし、事故時の責任分担や個人情報の取扱いも含め、契約書面での取り決めが不可欠です。
③ 総合事業(予防通所)にも送迎減算が新設
令和6年度改定では、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の予防通所介護・予防通所リハビリテーションの利用者にも送迎減算が新たに設けられました。単位数は要介護と同様で、片道▲47単位/回です。
ただし、総合事業は市町村ごとに単位数や運用が異なるため、管轄自治体が発行する「総合事業にかかるサービスコード」を必ず確認してください。同じ予防通所でも、自治体によって減算対応の仕方が異なります。
④ 豪雪地帯等における所要時間の取扱い
積雪等のやむを得ない事情で提供時間に影響が出た場合も、通所介護費の所要時間の取扱いに考慮されることが明確化されました。従来は利用者の心身の状況(急な体調不良等)のみが対象でしたが、急な気象状況の悪化も含まれるようになります。
⑤ 施行時期の違いに注意
令和6年度改定の施行時期は、サービス種別によって異なります。
▶ 令和6年4月1日施行:通所介護、訪問介護など
▶ 令和6年6月1日施行:訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導
デイサービス事業所は原則として4月1日施行、通所リハ事業所は6月1日施行です。混同しないよう注意が必要です。
現場で押さえるべき実務対応のポイント
送迎減算の適用要件を再確認
送迎減算は「サービス提供日に利用者の居宅と事業所の間の送迎が行われていない場合」に適用されます。利用者自身が来所した場合や、家族が送迎した場合も対象です。また、個別サービス計画上、送迎が往復か片道かを位置付けたうえで、実際の送迎の有無を確認し判断します。
一方で、サービス提供自体が行われていない日(利用者の都合でキャンセル等)は、送迎減算の適用対象外です。また、同一建物減算が適用される利用者も送迎減算の対象外となります。このあたりは監査でも指摘されやすいポイントなので、送迎記録と提供記録の整合性を日々確認する習慣が重要です。
改定に合わせた運営規程・契約書の見直し
送迎先の明確化や共同送迎の運用を始める場合は、運営規程や利用契約書の記載内容を見直す必要があります。特に「送迎対象地域」「同乗の有無」「事故時の対応」などは、利用者・ご家族へ事前に説明し、書面で同意を得ておくことがトラブル防止につながります。
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